2025.10.31
【心理学で読み解く】『ルックバック』―努力・承認・喪失の心を描くアニメ
「努力が報われない」と感じた時、心に起こること

藤野は京本の圧倒的な画力を前に、どれだけ努力しても埋まらない差を痛感します。
この「努力しても勝てない現実」は、多くの人が人生のどこかで経験する瞬間です。
心理学ではこれを「学習性無力感」と呼びます。
何度頑張っても成果が出ない経験を重ねると、「自分には無理だ」と信じ込み、行動する意欲を失ってしまう現象です。
●日常での例
資格試験で何度も落ちた、SNSで努力が評価されない――そんなとき、人は「どうせやっても意味がない」と感じがちです。
●ライフハック
行動を“他人との比較”から“自分の成長”に変えるのがポイント。
「昨日より1ページ多く描けた」「先週より少し丁寧に話せた」――そんな自分基準の成果を見つけることで、心は再び動き出します。
「誰かに認められたい」から「一緒にいたい」へ――藤野の承認欲求の変化

藤野の「描く理由」は、物語を通して少しずつ変化していきます。
最初は「褒められたい」――他者からの外的承認が原動力。
しかし、京本から「あなたは天才です」と言われて再び描き始めた頃には、承認は「支え合い」に変わっていました。
心理学的に言えば、藤野は自己決定理論(Self-Determination Theory)の三要素のうち、「有能感」から「関係性」へと動いています。
つまり、“評価されること”よりも、“共に描く時間”が幸せの中心になったのです。
●日常での例
職場で「上司に認められたい」と思っていたのに、
いつの間にか「仲間と成果を分かち合う」ことが楽しくなっていた――そんな変化は誰にでもあります。
●ライフハック
「認められたい」は悪ではありません。
むしろ、それをきっかけに“誰と関わりたいか”を見つけられるなら、それは成熟した承認欲求です。
「離れても前に進むしかない」――関係の終わりが、自分を形づくる瞬間

藤野は本当は京本と一緒に描きたかった。
けれど、京本は自分の力で生きるために、別の道を選ぶ。
その決断を前に、藤野は戸惑いながらも、歩みを止めることだけはしなかった――。
心理学ではこのような心の動きを、「アイデンティティの再構築」と呼びます。
大切な人との関係が変化するとき、人は“自分とは何か”“何のために頑張るのか”を改めて問い直します。
その過程で、他者に依存していた部分を手放し、少しずつ“自分の軸”を取り戻していくのです。
●日常での例
仲の良かった同僚が転職してしまった。
一緒に頑張っていた仲間が離れ、急に一人になった。
最初は心細くても、やがて「自分がやるしかない」と思えた瞬間、それは新しい自分の始まりです。
●ライフハック
“誰かがいない”という喪失感は、裏を返せば“自分で立てるチャンス”です。
心の空白を焦って埋めず、「この時間で何を得たいか」を考えてみましょう。
孤独の中で見つけた決意は、他人からも奪われない強さになります。
まとめ:心の葛藤も努力も、すべては自分を形づくる一歩。
『ルックバック』は、「努力」「承認」「孤独」という、誰もが一度は向き合う心のテーマを繊細に描いた作品です。
藤野と京本の関係は、競争相手であり、支えであり、互いの成長を促す存在。
誰かと比べて苦しくなった時こそ、自分の中の“描く理由”を見つめ直すチャンス。
それはきっと、あなたの人生をもう一度“描き直す”力になるはずです。
ルックバック
©藤本タツキ/集英社 2024「ルックバック」製作委員会
『ルックバック』は、藤野と京本――二人の少女が“漫画”を通して魂をぶつけ合う物語。
学年新聞で称賛を浴びていた藤野は、不登校の同級生・京本の卓越した画力に出会い、初めて挫折を知る。劣等感と執念が交錯する日々の果て、諦めたはずの夢を、卒業の日に交わされた「ずっとファンだった」という言葉が再び灯す。
ともにペンを握り、描き続けた青春。しかし――彼女たちの未来を引き裂く、あまりにも残酷な事件が起きる。
嫉妬、敬意、後悔、そして救い。藤野の筆先に宿るのは、友情か、それとも罪の記憶か。見終えたあと、あなたの心にも“描きたい衝動”が残る。
作品紹介を見る
この記事での使用素材は以下に帰属します
©藤本タツキ/集英社 2024「ルックバック」製作委員会